東京高等裁判所 昭和43年(ネ)2941号 判決 1969年9月29日
控訴人(原告)
柾木正弘
被控訴人(被告)
新潟運輸建設株式会社
ほか一名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人らは各自、控訴人に対し、金五〇〇万円およびこれに対する昭和四〇年八月一日より支払済みにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は一、二審を通じて被控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張および証拠関係は、控訴代理人において当審における控訴人本人尋問の結果を援用したほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
理由
一、昭和四〇年七月三〇日午後八時五分頃、新潟市山二ツ一一三六番地先道路上において、新潟市内へ向けて進行中の被控訴人坂爪の運転する被控訴会社所有の大型貨物自動車新一い―六七八一号(以下被控訴人車と略称する)と、新潟県中蒲原郡亀田町方向へ進行中の控訴人の運転する普通貨物自動車新四は―八一九一号(以下控訴人車と略称する)が接触し、そのため控訴人が負傷したことは当事者間に争いがない。
二、そこで右接触にいたつた経緯につき判断する。
〔証拠略〕を総合すると、本件道路は、新潟市から亀田町方面に通ずる国道四九号線であり、新潟市より同県亀田町方面へ向う場合、右道路の小山橋までが上り勾配となり、右橋からは右道路はゆるやかに左に曲りながら下り勾配となつており、本件事故の発生した付近の右道路の幅員は約八メートルであり、当時舗装されていたのは道路中央の幅六メートルの部分であつて、両側の路肩部分各一メートルは未舗装であつたこと、右両車が接触した地点は東北電力山二ツ線六八番の電柱から小山橋寄りに直線距離二二・三メートル、被控訴人車の進行方向へ向つて右道路舗装部分左端から約二・八メートル、控訴人車の進行方向へ向つて同舗装部分左端から約三・二メートル、即ち、右道路中央部分より約〇・二メートル被控訴人車進路内の地点であること、右接触の直前、被控訴人坂爪は、被控訴人車を時速四五キロメートルで右道路の中央部分のその進行方行に向つてやや左側を右接触地点に向つて運転し、右地点より二、三十メートル手前にさしかかつた際、小山橋方面から道路中央部分を下つて対向して来た控訴人車を認め、時速約三〇キロメートル位に減速するとともに被控訴人車を進行方向左側へ寄せながら進行したこと、控訴人は控訴人車を時速約四五キロメートルの速度で運転し、右道路中央部分を右接触地点方面へ向つて進行し、右地点二、三十メートル手前において反対方向より進行してくる被控訴人車を認め、やや減速するとともにハンドルをやや左側に切つて進行し、被控訴人車とすれちがい終る頃、再び右に切つたのであるが、その際右に切つたのが早すぎたため安全なすれ違いに十分な両車の間隔が失われたのみならず控訴人車の右側前部の三角窓は外側に全開にされており、その右ドアの窓は全部下におろして開かれ、控訴人は右腕をドアの窓枠にのせ右肘を窓から外へ突き出したまま運転していたため、右三角窓と控訴人の右肘は、被控訴人車の荷台最後部の下側の突起部分と接触し、右接触によつて右三角窓は粉砕され、控訴人の右肘が損傷されたことが認められる。
〔証拠略〕(いずれも供述調書)の記載中、〔証拠略〕中右認定に抵触する部分は信用し難く、他に右認定に反する証拠はない。
三、右認定事実によると、本件接触は、もつぱら、控訴人が前記の如く控訴人車の運転を誤つたためであり、しかも控訴人の受傷は同人が窓枠に右腕を乗せたまま運転したためであつて被控訴人車の構造上の欠陥または機能の障碍、もしくは被控訴人坂爪の運行上の過失により発生したものではないといわなければならない。
四、すると、本件事故につき、被控訴人坂爪には過失はなく、被控訴会社には自動車損害賠償法三条但書の免責事由がある。したがつて、被控訴人らに責任のあることを前提とする控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきである。
五、よつて原判決は正当であるから、本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法九五条八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 川添利起 長利正己 田尾桃二)